医院の未来を切り拓く!「ベースアップ評価料」の更なる算定へ

給与・賞与

歯科医院の運営において、スタッフの頑張りは必要不可欠です。医院の成功は、いかにスタッフの向上心を絶やさず、高いモチベーションを維持させるかにかかっているとも言われています。スタッフの満足度向上において欠かせないのが賃金であり、昨年、スタッフの賃金改善を図るための手段として「ベースアップ評価料」が算定されましたが、まだ届出を出していない歯科医院が多いのが現状です。

「ベースアップ評価」とは

ベースアップ評価料とは、医療機関で働く職員の賃金改善を目的に、厚生労働省より令和6年度に発表されました診療報酬改定の一部項目です。加算分を賃上げに直接充当することで、早期にスタッフの賃金改善を行うことができます。

参照:ベースアップ評価料等について|厚生労働省

昨年12月は、私のもとに多くの歯科医院から「賞与」に関する相談が寄せられました。例年の賞与決定に関する相談とは少し違い、『ベースアップ評価料の活用方法』についての問い合わせがほとんどでした。その背景には、スタッフの重要性を理解し、能力を正当に評価したい、スタッフへの給与や報酬の見直しを真剣に考える医院が増えてきたことがあるのではないでしょうか。

ベースアップ評価料をどう活用する?
-月給に組み込んだ場合-

多くの歯科医院では、この評価料を月給に加算する形で運用しています。しかし、月給に加算してしまうと、スタッフへのメリットは一時的なものとなりがちです。

例えば、月3,000円~8,000円程度のベースアップ評価手当を月給に加算しても、スタッフの給与はあまり大きな変動を見せません。その結果、スタッフの感謝の気持ちも一時的な小さな喜びに留まり、長期的なモチベーションには繋がりにくいのが現実です。

画像は、当社が提供しているスタッフの昇給基準となる「給与表」のサンプルです。多くの歯科医院では、年に1回の昇給のタイミングで1,000~3,000円程度の昇給を基準としています。そう考えると、ベースアップ評価料を活用した3,000~8,000円ほどの月給アップはスタッフにとって魅力的なはずですが、実際にはあまり効果的ではないというところです。

では、どのようにすればこのベースアップ評価料を効果的に活用できるのでしょうか。

ベースアップ評価料をより効果的に
-賞与に組み込んだ場合-

私が提案しているのは、ベースアップ評価料を月給に加算するのではなく、賞与にまとめて加算する方法です。先述したように、月3,000円~8,000円の評価料を月々加算するのではなく、その6ヶ月分を一括で賞与に追加するのです。そうすることで、賞与の金額は18,000円~48,000円程度増額され、スタッフの満足度や喜びも一気に高まります。

実際に、この方法を採用した歯科医院のスタッフと直接お話しをさせていただくと、「こんなに増額されて嬉しい」との声が多く、スタッフのモチベーション向上につながっているように感じました。賞与としてまとめて支給することで、ベースアップ評価料の恩恵がより実感しやすくなるのです。この方法だと単なる「一時の喜び」ではなく、スタッフにとってより有意義な形で報酬が還元される仕組みになります。

ベースアップ評価料の更なる算定について

現在、歯科医院におけるベースアップ評価料の算定率は、全国平均で20%前後とされており、まだ十分に活用されているとは言い難いのが現状です。

ベースアップ評価料の届出を行っている院長は、医院運営におけるスタッフの重要度を念頭に置いており、施策の内容を正しく理解し、既に活用方法を見出しています。しかし、未だ内容が把握できておらず、届出を出すことを迷っている院長も多いということでしょう。

何度も申し上げますが、スタッフは医院運営の最大の要となります。スタッフが医院に満足することで人材の流出を防ぎ、医院に知識やノウハウが蓄積されます。それは日々のサービス提供にも直結し、お客様満足度の向上、結果的に売上に貢献、スタッフが数字をつくるようになります。スタッフが自院に満足できる環境整備の一手として、賃金は最も重要な要素です。ベースアップ評価料では、加算された分を賃上げに直接充当することができ、費用捻出のために売上アップや経費削減を待たずとも、早期にスタッフの賃金改善を行うことができます

また、算定していない医院との差別化を図れるというのも重要なポイントです。

なお、「ベースアップ評価料」の更なる算定へ向け、日本医師会の定例記者会見にて、各地方公共団体へ積極的な働きかけを求めるよう呼びかけられました。中でも、経済対策として国に支援を要望してきた補正予算案において、病院と有床診療所は1病床当たり4万円、診療所は1施設当たり18万円が交付されるよう予算が計上されたとの説明がありました。これらの給付金を受け取れるかどうかの条件が、「ベースアップ評価料を算定している医療機関に限る」とのこともあり、まだ算定していない医院はこの機会に積極的に申請を検討していただきたいと思います。

ご興味ある院長はぜひご覧ください。

令和6年度補正予算案を踏まえベースアップ評価料の更なる算定と各地方公共団体への積極的な働き掛けを求める | 日医on-line


まとめ

『ベースアップ評価料』の算定は、早期でのスタッフの賃金改善を行うことができ、スタッフのやりがいやモチベーションを高め、人材確保、医療サービスの向上により医院の運営にも大きなプラスの影響を与える重要な手段です。特に、賞与にて分配することはスタッフ満足度を効果的に高める活用方法であり、長期的なモチベーション向上の働きかけへとつながります。

届出書を出すことを迷っている院長の中には、申請の煩雑さを理由にしている方もいらっしゃるかとは思いますが、提出作業が簡素化されるような環境整備も推進されております。ぜひ、多くの院長にご活用いただき、自院の活性化につなげていただきたく思います。


このコラムでは、ベースアップ評価料の活用方法やその重要性、今後の動向について触れました。歯科医院の経営者として、スタッフへの評価をどのように反映させるかは非常に大切な課題であり、その方法を実際にどのように運用するかが医院の経営に影響を与える要因となります。皆様の医院がもっと良くなりますように。増患・増収.comでは歯科医院経営に頑張る院長を応援しています。

提供:歯科専門 増患・増収.com 【新経営グループ】
歯科医院向けのコンサルティング、歯科医院の安定経営を目指す。「歯科医院のためのスタッフ人事評価制度マニュアル」作成を機に、歯科人事コンサルティングに取り組む。歯科専門コンサルタントとして歯科医院の改革を行い、200医院を超える実績を持つ。

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