【もう悩まない!歯科医院の賞与支給】『成果配分方式』でスタッフのモチベーション向上へ

給与・賞与

スタッフにとって賞与は仕事に対するモチベーションアップに欠かせない最も重要な要素です。しかし、院長にとっては医院の経営を圧迫しかねない大きな支出になります。

「スタッフにボーナスを出したいけれど、いくらが適正なのか分からない」

「毎年なんとなく30万円支給しているけど、これで良いのかな…」

賞与支給基準が曖昧な院長は、まず、私が過去に配信した「歯科医院の賞与の決め方」をご覧ください。


さて、ここまで読んでいただいている院長は、賞与を医院経営の要として活用しようとしている、一歩進んだ“経営者目線”を持った方です。

これからお話しする『成果配分型』の賞与基準は、このような医院に向いています。

『成果配分型』がハマる!のはこんな歯科医院

  • 数字や経営に意識が高く、「利益が出たらスタッフに還元する」という経営者意識がある。
  • 賞与を“経費”ではなく“投資”として考えることができる。
  • スタッフ管理ができており、成果や貢献度をきちんと反映させたいと考えている。
  • 「医院の成果は全員の協力で成り立つ」と考え、チーム力の向上を図りたい。
  • スタッフにも数字(売上)を意識させ、目標設定と達成までのプロセスを意識できる人材になって欲しい。

さて、本題に入ります。

前述したように、賞与はスタッフのモチベーションアップに欠かせない要素ですが、一方で医院の経営を圧迫しかねない大きな支出です。

だからこそ、「感覚」ではなく「経営数字と方針」に基づいて決めることが大切です。

賞与を決める4つの視点

① 経営数字から逆算する(『成果分配型』の賞与原資を考える)

まずは、医院の売上と利益から「支給可能額」を見積もることが大前提です。

歯科医院の健全経営は、人件費率25〜30%が目安と言われています。

【歯科医院の安定経営の目安】
材料費・技工料 15~20%
家賃・光熱費 5~10%
その他の経費 10%前後
人件費 25~30%
医院の利益 10~15%程度

例:年間売上6,000万円の場合

人件費総額の目安:1,500〜1,800万円(この内に「給与+賞与+社会保険料」を含めるのが筋)

医院における「成果配分賞与」を考える際は、利益と賞与の割合を前年・前々年と2~3年遡ってシミュレーションする必要があります。3年分の収支データで賞与の割合(%)がある程度一定であれば、自信を持って成果配分の原資として提示できます。

② 支給方法のタイプを決める

賞与は、「どんなルールで配分するか」でスタッフの受け止め方が変わります。

均等配分型:全員に同額(シンプルで不満が少ない)
基本給連動型:基本給の○か月分(多くの企業で一般的)
評価連動型:業績や貢献度に応じて差をつける(やる気UPだが不満も出やすい)

多くの歯科医院では、一般企業同様、「基本給連動型」にて支給されていることが多いです。

ただ、私の元にご相談くださる医院では、「スタッフのモチベーションや頑張りを正しく評価してあげたい!」と強い想いを持つ院長が多く、そんな院長には「基本給連動+評価連動」と交えた方法を推奨しています。

③ 業界の相場感を押さえる

「相場より少なすぎる」と不満になり、「相場より多すぎる」と経営が苦しくなる…。

おおよその目安は次のとおりです。
※ 求人サイトや私が携わっている現場の個人調べですので、あくまで参考に。

歯科衛生士:10〜30万円/回(夏・冬)
歯科助手・受付:5〜20万円/回(夏・冬)

医院の規模や自費率によって差は出ますが、院長先生が“市場感覚”を把握しておくことは大切です。

④ 医院からのメッセージ性を持たせる

私がコンサルタントとして歯科医院の現場改善に取り組む中で、まず初めにやるのはスタッフの現状調査です。現在のモチベーションや、医院に不満があるかなどを院長抜きで直接面談したり、アンケートにて記入してもらったりします。そこでよく不満を露呈するコンテンツになり得るのが「賞与」です。

「なぜか今年は去年より賞与が少なかった」

「自分なりに頑張っているのに、評価してもらえてないことがわかった」

賞与の額次第で、こんな風に受け取ってしまうスタッフがいます。

これらが問題なのは、「なぜか」をスタッフが理解できていないことです。「もう少しここを頑張って欲しい!」と思っている院長のメッセージが正しく伝わっていないのです。

賞与は「単なるお金」ではなく、医院からスタッフへの感謝と評価のメッセージでもあります。

「今年は自費診療が伸びて利益が出たので、スタッフに還元します」

「来年も一緒に頑張ろうという意味で、基本給1か月分を支給します」

こうした言葉を添えるだけで、スタッフの受け止め方は大きく変わります。

さらに、医院として「人事評価制度」をきちんと整備し、スタッフに頑張る基準を明示しておくことが重要です。

では、私が推奨している「基本給連動+評価連動」の賞与支給方法をご紹介しておきます。

先ほどの年間売上6,000万円の医院を例としてシミュレーションしてみましょう。

『成果配分方式』×『評価連動型』の賞与支給シミュレーション例

1.収入(半年分)と材料技工費と固定費と利益を提示します。

収入6,000万円 - 材料費1,200万円 - 固定費3,800万円 = 利益1,000万円

2.過去の収支データから半期利益から賞与の割合を決定します。今回は20%で計算します。

利益1,000万円 ×20% = 200万円 (成果配分賞与原資額)

3.成果配分賞与額が決定すれば、人事評価等でスタッフ個人評価し、各スタッフの配分割合を決定します。

【スタッフ合計】

基本賞与=月平均給の50%を基本賞与計825,000円 配分賞与計 1,175,000円、賞与決定額計は原資と同様2,000,000円となります。

スタッフAの例では、給与30万円×12カ月、賞与40万円×年2回を想定すると年収440万円となり、全国平均と比較しても高めの層に入ります。逆に、スタッフFは市場よりも低い数値になります。基本給と連動することでベテランスタッフと経験が浅いスタッフとの差をつくることができ、経験が浅くともモチベーションの高いスタッフは評価連動により差を付けることができます。さらに賞与支給時に年収をイメージしておくことで、スタッフの目標設定を具体化することができます。

全国平均(厚生労働省の統計や求人サイトによる独自調査の結果)

全国平均:約370~400万円

初任給レベル:年収300万円台前半

経験10年以上・都市部:400~450万円程度

管理職・主任クラス:450万円以上もあり

地域の平均なども意識しておくと、採用をはじめ既存スタッフの院長への信頼感や待遇の満足度向上、果ては離職防止に繋がります。

まとめ

歯科医院における賞与の決め方は、

  1. 経営数字から逆算する
  2. 支給方法を決める
  3. 業界相場を参考にする
  4. 医院のメッセージを込める

この4つの視点で考えると、ただの賞与(経費)が未来への“投資”へと考えられるようになります。


「なんとなく30万円」から一歩進んで、数字と方針に基づいた賞与を設計すれば、スタッフに安心感を与え、医院経営も安定します。

本記事内で使用しているシミュレーションシートは「ツールダウンロード」よりExcelファイルとしてダウンロードいただけますので、ぜひ、このシミュレーションを活用して自院の発展に役立ててください。

歯科医院専用人事評価ツール無料ダウンロード

もし、賞与支給に不安があれば、「賞与支給シミュレーション講座」なども開催しておりますので、私と一緒に医院に合った賞与支給の基準を考えましょう。

歯科医院の賞与支給に関して当社がご支援できること

給与・賞与改定セミナーのご案内
人事評価制度導入コンサルティングのご案内
書籍のご案内

提供:歯科専門 増患・増収.com 【新経営グループ】
歯科医院向けのコンサルティング、歯科医院の安定経営を目指す。「歯科医院のためのスタッフ人事評価制度マニュアル」作成を機に、歯科人事コンサルティングに取り組む。歯科専門コンサルタントとして歯科医院の改革を行い、200医院を超える実績を持つ。
TOP