先日、京都インプラント研究所様よりご依頼をいただき、特別講演を行いました。その内容を当サイトをご覧の皆さまにも共有させていただきます。
インプラント治療から考える経営実践学
インプラントの利益率と利益額(歯科医院の会計、要点解説)
インプラント治療の相場は、
- 検査診断料 15,000~50,000円
- インプラントの手術代 150,000~350,000円
- 上部構造(人工歯、被せ物) 50,000~180,000円
- 費用総額 300,000~580,000円
と言われています。
インプラント治療の価格決定方法は2通りあります。
- 原価から考える
- 利益率から考える
実際にインプラント治療の利益率をシミュレーションしてみましょう。
患者が支払う料金は以下の通りです。
インプラント体 | 21万円 |
アパットメント | 5万円 |
上部構造 | 13万円 |
合計 | 40万円 |
それでは、医院の仕入れ価格と比較して粗利益(売上-原価)を計算してみましょう。
① 患者が支払う料金 | ② 医院の仕入価格 | ①-② 粗利益 | |
インプラント体 | 21万円 | 4万円 | 17万円 |
アパットメント | 5万円 | 3万円 | 2万円 |
上部構造 | 13万円 | 4万円 | 9万円 |
合計 | 40万円 | 10万円 | 30万円 |
医院によって差はありますが、平均的に上記のような金額になります。
保険診療が80%の利益率に対してインプラント治療は75%であり、保険診療に比べると利益率は低くなります。ですが、1歯当たりの粗利益額が30万円のインプラント治療は、保険診療が月平均40万点のような医院では約2日分の粗利益額と同等の月粗利益額を上げることができます。
極論ですが、月に10歯のインプラント治療ができれば、保険診療40万点に匹敵するとも考えられるということです。
歯科医院の増収
歯科医院の売上(収入)について考える
歯科医院の会計を解説しますと、売上は2つの要素で決まります。「人数」と「単価」です。売上を上げるには、この2つの要素のどちらか、または両方を上げるしか方法はありません。
それでは、医院の売上(収入)の中身を見てみましょう。
歯科医院の売上(収入)は「医業収入」であり、保険診療から得られる「保険収入」、自費診療から得られる「自費収入」、歯ブラシ等の物品販売などの「その他収入」によって構成されています。
保険収入と自費収入の割合は、医院の方針や目標により決定します。医業収入が増加している優良医院では、自費割合20%を達成している医院が目立ちます。先述した「単価」を上げるには、自費診療が課題となります。
そして、売上(収入)から変動費(材料代や技工代)を引いたものを「粗利益」、売上(収入)から変動費と固定費(人件費や家賃など)を引いて残った金額が「利益」になります。
歯科医院の損益を分析する
損益から見る、医院経営にとって重要な会計数値は2つです。
一つは粗利益率=粗利益/売上(医業収入)。粗利益率は80%前後を目標としましょう。
もう一つは人件費率(労働分配率)です。人件費は歯科医院の会計の中でもっとも高い費用になります。人件費率は売上に対しての人件費の割合、労働分配率は粗利益額に対しての人件費の割合です。労働分配率は30%前後を目標とします。
損益分岐点を把握する
会計指標の1つとして「損益分岐点」があります。下図のように、売上と費用が等しくなる点を損益分岐点と呼びます。この点の超えた売上分が利益になります。
上記はよく知られた会計指標ですが、もう一歩進んで院長が把握しておくべき指標は「存続分岐点」です。損益分岐点に借入返済や設備資金といった医院継続に必要なお金と、生活費、貯蓄額など院長が生活を維持するために必要なお金を含めた売上高を計算してほしいです。必要な売上高がわかれば、これを目標として達成できれば、適切な時期に必要な貯蓄額に到達することも可能となります。
会計数値とキャッシュフローを理解することで、医院の目標通りの売上と利益また貯蓄が可能となります。より詳しい歯科会計を理解したい方、医院の現状から現在の立ち位置を正しく把握したい方は当社の歯科会計セミナーに参加することをおすすめいたします。
現在、口腔内の審美性向上は好機です。いわゆるインプラト等のオペが求められている状況です。矯正歯科医院を中心に、業績を上げられている医院は多数あります。アフターコロナを考えれば、人々の注目はマスクを外した口元に集中するのではないでしょうか。歯科業界にとって、この状況は大きくプラスに働くと予想できます。インプラント治療や審美補綴治療などの採算性を事例に、医院で行っているカウンセリングをスタッフと共に改善することで、医院の収入アップはもちろん、生産性の高い医院を目指すことができます。
また、人件費率(労働分配率)を考える上で、スタッフの昇給や賞与の支給、採用の可否を収入から算定しなければなりません。自院を共に支えるスタッフへと成長してもらうためにも、正しい評価基準と給与規定、オープンで公平な「人事評価制度」が仕組み化されているとより効果的です。
人事評価制度を導入することのメリットとして、衛生士の時給、月給、年収を推測することができるようになります。人事評価に対しては、「必要だが難しい」という声をよくお聞きします。しかし、構造を理解すれば医院で作ることも難しくなく、院長の理想の医院づくりを効率良く後押ししくてくれる仕組みとなります。
今回の講義では、①評価点数(60/100点万点)を賞与に評価計数として掛け算する方法。賞与額300,000×1.1(評価点60点)=330,000。300,000×1.2(評価点80点)=360,000円と評価点数を賞与に反映する方法。
②衛生士実地指導料を分配する方法。80点×10円=800円×7人(1日当たり)=5,600円×21日=117,600円の50%の58,800円から月給に上乗せする方法。
③月保険点数ごとのモデルから計算する方法。月保険点数102,000点⇒338,000円から月保険点数106,000点⇒340,000円へ。さらに月保険点数116,000点⇒350,000円、月保険点数125,000点⇒375,000円の医院毎の保険点数を分配。
3つのモデルを利用する方法を解説しました。
昨今の競争化が激化している業界を乗り越えるには、スタッフとの一体感ある組織運営が重要となります。スタッフのやる気をどう持続させれば良いのか、スタッフが積極的に医院運営へ携わるようになるにはどのような仕組みが必要か、という課題には「人事評価制度」を理解することが必要です。
ここまでご覧になって、医院経営を一歩進めたい方、会計を理解したい方、スタッフとの関係をよりよいものにしたい方、人事評価制度に興味をお持ちになった方は、ぜひ当社までお声がけください。
講義日程 | 2024年2月23日(金)14時00分~15時00分 |
講義タイトル | 「インプラント治療から考える経営実践学」 |
講師名 | 竹田元治 |
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