<2024年診療報酬改定>「ベースアップ評価料」は届出すべきか

給与・賞与

クライアントの院長から、「ベースアップ評価料」に関してたくさん質問をいただきます。比較的多くの院長が理解に苦しみ、今回の届出を躊躇っているのではないでしょうか?

「ベースアップ評価料」は届出すべきか

結論から申し上げると、「ベースアップ評価料は申請すべき」と私は考えております。

実際に私からこの内容をご説明させていただいた院長のほとんどが、「前向きに検討する」と言われて算定される予定です。「申請するならもっと早くすべきだった!」と後悔される事のないように、本記事にてご理解を深めて判断していただきたいです。

 

ベースアップ評価料の届出はハードルが高い?

ベースアップ評価料の申請に悩む方のご意見として、

  • 「賃上げ2.5%、2%のアップはできないから無理」
  • 「自費が20%以上だからウチは関係ない」
  • 「パートばかりだから関係ない」

という声を多くいただきます。

これは、厚労省から発表されているベースアップ評価の説明ページやスライドや動画の情報量の多さに圧倒されて、内容を解釈しきれていないからでは?と感じています。

私なりにシンプルに説明しますと、このベースアップ評価料は加算で得た保険診療額をスタッフへ全て分配すれば良いのです。

 

ベースアップ評価料にて加算される報酬額を
シミュレーションしてみましょう!

歯科診療所であれば、初診料に10点、再診料に2点、訪問診療料イで41点を、それぞれ医院の月平均数で掛け算し、シミュレーションすれば分かり易いです(厚労省HPにあるエクセルシート参照)。

ベースアップ評価料の概要と診療報酬シミュレーション

例えば、
月平均初診数100人×10点(ベースアップ評価料加算分)=1,000点、
再診数400人×2点(ベースアップ評価料加算分)=800点、
加算分の診療報酬額は、(1,000点+800点)×10円=18,000円 となり、
年間に換算すると、18,000円×12ヶ月=216,000円の試算になります。

よって、年間216,000円をスタッフへ分配するイメージとなります。
なお、診療月によって報酬額は一定ではありませんので、差額は賞与で調整していただければ構いません。

加算報酬額のスタッフへの分配は、常勤2:非常勤1を目安に!

スタッフヘの分配については、スタッフが常勤3名・非常勤2名であれば、常勤2:非常勤1くらいの割合を目安にします。

常勤へ月額4,500円×3人、非常勤へ月額2,250円×2人といった分配のイメージでいかがでしょうか。※スタッフ数や常勤・非常勤の割合によって分配額は変動します。

ベースアップ評価料にて得た報酬額の分配イメージ<歯科医院>

ここで準備していただきたい点が1つあります。給与・賞与明細には、この増加分を別項目で記載してください。「ベースアップ評価手当」など、ネーミングは自由なので手当等で別書されていれば、どれだけスタッフへ還元したのか、報告書に記載する金額を集計しやすく、後々の証明にもなります。


「ベースアップ評価料」の申請に
悩んでおられる方へ

先述した、「賃上げ2.5%、2%のアップはできないから無理」というお悩みに対しては、令和6年:2.5%増、令和7年:2.0%増の賃上げを達成しなければならないのは、40歳未満の勤務医師、勤務歯科医師、事務職員も加えて今回の支給対象にする場合のみ、必須となる指標です。いわゆるエッセンシャルワーカー(薬剤師看護師、理学療法士、歯科衛生士、歯科技工士、管理栄養士、医師事務作業補助者、その他医療に従事する職員)のみを対象とする場合は関係ありません。この点は施設基準を読み込まないと誤解しやすい内容かと思います。

賃上げ促進税制の概要。詳しくは厚生労働省より発表されている資料をご覧ください。

さらに、「自費率が20%を超えるから関係ないのでは?」とのご質問につきましては、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」を算定する際には対象外となりますが、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」の申請に自費割合は関係ありません。この点も、区別してご理解を深めていただければと思います。

なお、医療法人、個人事業を問わず、このベースアップ評価料で賃上げを行った給与賞与を含めて所得拡大税制が適用できますので、積極的に活用したいところです。

 


 

診療点数加算により患者負担が増えるなどの懸念事項もありますが、医院の採用率アップや定着率アップにお悩みの院長にとっては今回の診療報酬改定を活用したスタッフの待遇改善は一助になるかもしれません。医院経営において、スタッフ管理は最重要の項目です。ご参考ください。

提供:
【竹田 元治】歯科専門 増患・増収.com
歯科医院向けのコンサルティング、歯科医院の安定経営を目指す。「歯科医院のためのスタッフ人事評価制度マニュアル」作成を機に、歯科人事コンサルティングに取り組む。歯科専門コンサルタントとして歯科医院の改革を行い、200医院を超える実績を持つ。

【大谷内 裕】新経営サービス清水税理士法人
診療所・介護事業所の立ち上げ、経営改善、M&Aの支援を手掛ける医療介護コンサルタント。診療所・病院の医療事務7年勤務を経て税務会計業界へ。介護福祉経営士2級、ヘルパー2級、宅地建物取引士有資格者。M&Aアドバイザー。税務会計では各診療科の担当をし、医師・コメディカルスタッフとともに経営改善を図る。診療所・介護施設の立上げ実績多数。講演多数、テーマは「失敗しないコンセプト事業計画づくりにおける勝ち組戦略」「同時改定をチャンスに変える医療介護戦略」「IOT、介護ロボット利用による介護の変革」「クリニック経営成功の未来予想図」「医院承継 基礎から始めるM&A」など。

 

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