歯科医院の院長とお話ししていると、ベースアップ評価料について「届出は出さないとどうなる?」「他の医院ではどれくらい届出している?」とのご相談をいただきます。
近畿厚生局より届出受理状況のデータが発表されておりましたので、近畿エリア(大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀、和歌山)の歯科医院の算定状況をまとめてみました。数字は直近のデータより概算で算出しておりますのでご参考ください。
参考:保険医療機関・保険薬局の管内指定状況等について/近畿厚生局 (mhlw.go.jp)
「歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」の算定数は、施設数の多い大阪、兵庫、京都の順に高く、滋賀で100件を超え、奈良、和歌山では低い状況です。賃金増率が低い場合の(Ⅰ)への上乗せ評価とする「歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)1」は大阪で158件、兵庫33件、京都17件、「(Ⅱ)2」に関してはどこも20件未満とまだまだ低い状況です。
それでは、各地の「歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」算定率を見てみましょう。
「歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の現在の算定率」は全国的に20%前後です。
近畿エリアでは大阪と京都が全国水準よりも高くなっており、滋賀、兵庫はやや低く、奈良、和歌山では全国水準を大きく下回っています。
近畿圏内では全国水準と同等であるといえますが、全国的にみると東京で12%前後、岐阜では45%前後となっており、施設数や地域によって大幅な上下があるようです。
このことを実際に私がコンサルティングをしているいくつかの歯科医院の院長とお話ししていると、地域の歯科医師会の対応に温度差があり、それが数値にも影響しているように感じられました。
今までにない改定項目を見切り発車的にスタートしたため、多数の医院の理解を得ることが難しく全国的に低い水準となってしまったのではないでしょうか。
多くの医院が判断に迷う中、診療報酬改定の概要をよく理解し即決できた20%の院長は、医院改革への意識が常にあり、医院経営において重要である決断力の高い優秀な方であると私は感じます。
実際に算定された医院では、スタッフの毎月の給与に3,000~5,000円のベースアップ評価手当として上乗せして支払うことができたとご報告を受けております。夏季賞与にベースアップ評価手当として18,000~30,000円(月3,000~5,000円の6か月分)を上乗せして支払われた医院もあります。今期は定額減税の効果もあり、手取り分が増えたことでスタッフ満足度も高かったとのことです。
また、いくつかの医院ではスタッフがベースアップ評価料の内容を知っており、「自分の勤務先がベースアップ評価料の算定をされているか」を気にしていたので届出を出しておいて良かった・出しておらず反応に困ったとの話もお伺いしました。
算定された医院の院長は、ベースアップ評価料を活用して上手くスタッフのモチベーションアップに繋げられていると感じます。全国的にまだ算定率が低い今、他の医院と差別化できるという強みもあります。
「内容が複雑でイメージがわかない」「患者負担が増えることが気がかり」など、自院にとってベースアップ評価料を取り入れることが効果的かわからない方は、人事評価との連携や既に取り入れている医院の事例を交えてアドバイスさせていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。
執筆:
竹田 元治 歯科専門 増患・増収.com
歯科医院向けのコンサルティング、歯科医院の安定経営を目指す。「歯科医院のためのスタッフ人事評価制度マニュアル」作成を機に、歯科人事コンサルティングに取り組む。歯科専門コンサルタントとして歯科医院の改革を行い、200医院を超える実績を持つ。